
画像は締結式の様子/(左から)ナビタイムジャパンの大西啓介社長と西脇隆俊知事
2025年9月5日、京都府と株式会社ナビタイムジャパンが「子育てにやさしい社会づくりの推進に係る連携協定」を締結した。
京都府は「子育て環境日本一」の実現を目指し、子育てにやさしい取り組みを実施している府内の店舗・施設を「キッズフレンドリー施設」として登録。生活に役立つ情報とともに発信する電子マップサイト「まもっぷ」を2015年から運用している。
一方のナビタイムジャパンは、電車・バス・車・徒歩など、さまざまな交通手段を組み合わせたドアtoドアの最適なルート案内を実現する総合ナビゲーションサービス「NAVITIME」を展開しているのはご存じのとおり。近年では、赤ちゃんや子どもとのお出かけの移動をトータルでサポートする機能「NAVITIME for Baby」をリリースするなど、子育て世帯に寄り添ったサービス開発にも力を入れている。
本協定締結により、子育て世帯が「もっと安心で楽しいお出かけ」ができる環境を創造することを目的に、「まもっぷ」と「NAVITIME」をサービス連携し、それぞれの強みを生かしながら外出をサポートする環境づくりを強化していくという。なお、ナビタイムジャパンが自治体と子育て分野で協定を結ぶのは初めてのことだ。
今回は京都府健康福祉部こども・子育て総合支援室子育て環境推進係課長補佐 山田恵子さん、副主査 森淳美さん、株式会社ナビタイムジャパン トータルナビ事業部部長 大浦晃一さんの3名に、協定締結の背景や今後の展望についてお聞きした。
――このたびの協定締結のきっかけについて教えてください。
森さん:京都府では、子どもや子育て世代をはじめ全ての人にとって暮らしやすい「子育て環境日本一」の京都の実現を目指し、取り組んでいます。その取り組みの一つとして力を入れているのが、子育て世帯の外出支援です。小さなお子様連れで外出する際には、子ども用トイレや授乳室、おむつ替えスペースなどの設備が欠かせませんが、調査の中で「どこにあるのか分からない」「見つけづらい」といった不安を抱えている方が多いことがわかりました。
そうした不安を少しでも解消するため、これらの設備を備えた施設や、「きょうと子育て応援パスポート」の提示による無料・割引サービスを提供されている店舗・施設を「キッズフレンドリー施設」として登録し、電子マップ上で検索できるWEBサイト「まもっぷ」を運営しています。利用者はGPS機能で付近のキッズフレンドリー施設をはじめ、小さな子どもが遊びやすい公園、家族でお出かけしたいレジャー施設などを検索できるほか、電子版の「きょうと子育て応援パスポート」も「まもっぷ」上で表示可能です。
そんな「まもっぷ」は運用開始から10年が経ち、スポット登録件数も4,200件を超えました。しかし、キッズフレンドリー施設やWEBサイト自体の認知度は、まだまだ十分とは言い難いのが実情です。そこで、キッズフレンドリー施設の情報を京都府のオープンデータとして公開し、民間のアプリなどに活用してもらうことで、利便性や認知度を高められないかと模索していました。そうした中で、ナビタイムジャパンさんが提供されている「NAVITIME for Baby」に注目し、京都府から連携の相談をさせていただいたのが協定締結のきっかけになります。

大浦さん:ナビタイムジャパンでは、2009年から、階段を避けてエレベーターを利用するルートのナビゲーションを提案しています。重い荷物を持って移動される方、バリアフリーな移動のサポートなど、移動に関する様々なニーズにお応えするために調査・研究を重ねてきました。ナビタイムジャパンが蓄積した技術・データを子育て中の保護者の方を支援する観点で再構築し、2021年に「NAVITIME for Baby」というサービスをリリースしました。
「NAVITIME for Baby」では、「ベビーカー」「抱っこひも」「一緒に歩く」など、子どもの移動手段に合わせたおすすめのルートが検索できます。このようなルート検索機能は、弊社が独自に整備した「駅のエレベーター情報」や「車両位置情報」などと、ルート探索アルゴリズムを組み合わせて提供しています。 あわせて、弊社が保有する施設データと、京都府様が整備されている充実したオープンデータを組み合わせることで、ルート検索時に「授乳室」「おむつ替えスペース」など子育てに役立つ情報が表示できるようになりました。
今回、京都府様がこのように充実したデータを整備されていましたので、ぜひということで連携させていただいた形です。
――さっそく連携したサービスも拝見しました。たとえば「NAVITIME」では、地図でキッズフレンドリー施設の位置や子育て支援情報の一覧が確認できました。逆に「まもっぷ」でも、各キッズフレンドリー施設のページに「NAVITIME」のアプリへワンタップで遷移するボタンが登場して、シームレスにルート検索ができる仕様になっていますね。さらに「まもっぷ」から「NAVITIME」に遷移したユーザーは、「NAVITIME for Baby」の有料機能の一部を無料で利用できるというのも素晴らしい取り組みだと思います。
ここでは京都府さんとナビタイムジャパンさんが所有されている既存のデータをアッセンブルしたものというお話でしたが、サービス連携にあたって新たに収集したデータなどはありますか?


大浦さん:キッズフレンドリー施設情報の取り込みのほか、社内整備として、京都府内にある駅構内のエレベーターの位置情報も拡充しました。もともと弊社ではエレベーターの場所を考慮したルート検索に取り組んでいるのですが、たとえば「ベビーカー優先ルート」においては、エレベーターが設置されている駅に限定して乗り換えやルートを提案します。「この車両に乗ればエレベーターの近くで降りられる」といった、 細かながら利便性を高める情報も考慮したルート案内にしています。
――検索結果の画面で、周辺の授乳室やおむつ替えスペースの案内が自動的に表示されるのも、探すひと手間が省けて嬉しい方が多そうです。
今回のサービス連携で、あらためて「まもっぷ」に注目が集まるかと思います。京都府さんのほうでは、そうしたタイミングでキッズフレンドリー施設をさらに募集するといった施策を取られる予定はありますか?
森さん:施設の拡充自体は随時取り組んでいます。たとえば昨年からは、株式会社iibaさん(※子育て系口コミ情報プラットフォーム「iiba」の開発・運営元)、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社さんと連携し、親子連れを対象とした街歩きイベントやお仕事体験イベントを企画しています。そこでキッズフレンドリー施設の認知度向上を図るのはもちろん、協力いただいた事業者の方々に登録を呼びかけるなど、さまざまな取り組みを通してPRを行っています。
――なるほど。それでは、もし現時点で課題感や改良すべき点などが見えていましたらお聞きできればと思いますが、やはり大きくはPRの問題になるのでしょうか?
山田さん:そうですね。周知だけではなくて、やはり利用促進も図っていくことが大事であると感じています。「きょうと子育て応援パスポート」の存在は子育て世帯にとって非常に大きなメリットであり、電子版のパスポートは「まもっぷ」上で表示されるようになっています。しかし、日常的に「まもっぷ」でパスポートが使える施設を探し、お得に活用してくださる方がいる一方で、パスポートを使う時だけ「まもっぷ」を開く方、つまり「まもっぷ」の存在そのものの利便性に気づいていない方も少なくありません。
さらに使いやすくなった「まもっぷ」をぜひ知っていただくため、今後もナビタイムジャパンさんのように民間事業者さんのサービスと連携し、イベントやキャンペーンを通じて周知と利用促進を図っていきたいところです。10月1日からはさっそく、「NAVITIME」との連携を記念したデジタルギフト券が当たるキャンペーンも実施しています。
――個人的な印象ですが、こうした行政が運営するバリアフリーマップ関連の施策の中でも、京都府さんは特に幅広い分野の民間事業者と積極的に連携しながら取り組まれているように感じています。周知・利用促進のために入り口となる媒体を増やす目的も大きいかと思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか?
山田さん:媒体を増やすというより、使い勝手のよいものにしたい、よりニーズに合ったものにしたいという思いが大きいです。長年「まもっぷ」を運営していますが、行政の職員の知恵でできることは限界があると感じています。そこで、専門家である民間事業者さんと連携して、さらに使いやすいものを目指したい。行政の信頼性と、民間事業者さんの技術の両輪を携えた存在として周知していきたいというところですね。府民の方々にとっても民間事業者さんにとっても、win-winな取り組みにしていくことが理想です。
――ありがとうございます。現在、サービス連携が最初の一歩を踏み出したところですが、今後どのように連携を発展させていきたいか、ナビタイムジャパンさんに展望をお聞きできればと思います。
大浦さん:先ほどもお話した通り、今回の連携に当たっては府内の駅構内にあるエレベーター情報の整備をしています。その網羅性を高めていくことは必要ですし、駅だけでなく駅ビルの中の移動まで考えた、お子様連れの外出がより安全・安心になるような取り組みに注力していきたいですね。また、まずはサービスを使っていただいて、フィードバックから改良を重ねていくサイクルを回せることは、短期的にも長期的にも重要です。
たとえば、情報の網羅性を高めると「情報量が多くなって見づらい」というご意見をいただくことがあります。あるいは、ベビーカー優先ルートであれば、我々としては極力歩く距離を短くしようという方針でルート検索の結果をチューニングしています。しかし、そうするとバスに乗るルートが表示されることがあり、「ベビーカーでのバス乗車は厳しい」といった改善を求めるお声が聞かれます。かといってバスに乗るルートを表示しないのも移動の選択肢を狭めてしまうことになり、弊社の専門の部隊が時間をかけて「このケースは表示してOK、このケースは避けよう」と検証をしていく必要が出てくるのです 。
そうした生の声は大変貴重なものです。フィードバックから日々微修正を繰り返し、品質をさらに向上していければと考えています。
――チューニングは実際に体験しないと分からないところもあるでしょうし、大変な作業だと推察しますが、そうして建設的な意見を細かくサービスに反映する姿勢が、ユーザーの信頼を勝ち取り、移動のストレスを軽減することにも繋がっているのだろうということが伝わってきました。
それでは、最後に国土交通省事業についても伺います。国土交通省が推進する歩行空間ナビ・プロジェクトでは、歩行空間における段差や幅員などの情報や、建物内のバリアフリー設備のデータ等をオープンデータとして公開し、多様なサービスに活用してもらおうと整備を進めています。本プロジェクトと「まもっぷ」や「NAVITIME」が連携できる可能性はありますか? また、本プロジェクトについて何かご意見があればお聞かせください。
森さん:京都府としては、キッズフレンドリー施設としてまだ登録されていない施設の情報収集は引き続き課題になっています。そのため、このプロジェクトで公開されるオープンデータから授乳スペースやおむつ台などの設備をもつ施設を探して、府から登録を呼びかけるといった活用方法が一つあるのかなと思いました。
大浦さん:弊社では、より安心・安全なルートを提案するために、バリアフリー関連の情報を調査していますが、整備されているデータはなかなか見つかりません。我々が整備・保有 している地図情報から、ある程度の道の幅員や坂の傾斜はわかるのですが、細かな段差などの判断が 難しいケースがあります。加えて、施設内の情報収集に関しては、まだまだ取り組んでいく必要があると考えております。そうした部分を、鮮度と正確性を確保したうえでオープンデータ化していただくと、より質の高いサービスを提供するための土台として活用できるのではないかと期待しています。
――ありがとうございました。
