取材記事

市民の協力でバリア情報を収集!「歩行空間ネットワークデータ」府中市実証レポート

市民の協力でバリア情報を収集!「歩行空間ネットワークデータ」府中市実証レポート

「歩行空間ネットワークデータ」の持続的かつ効率的な更新に向けた市民参加型の実証が、2024年1月17日~18日の2日間、東京都府中市で行われました。


国土交通省では、車いすやベビーカーの利用者、自動配送ロボットなども含めたすべての人や物が歩行空間を円滑に移動するための支援策の一つとして、歩行空間におけるさまざまな情報(段差や幅員、エレベーターの有無等)を「歩行空間ネットワークデータ」としてオープンデータ化し、バリアを回避した経路検索ナビゲーション開発をはじめ、さまざまな移動支援サービスにデータが活用されることを期待してプロジェクトを推進しています。

歩行空間ネットワークデータは、歩行空間の形状に合わせて配置するリンク(線)とノード(点)に対して、段差や有効幅員などバリアに関する情報を付与したデータ。

一方で、道路工事などによる歩行空間の構造の変化など、持続的なデータ更新における課題として、現地での詳細な調査にかかる負担の大きさがあげられます。

こうした課題を踏まえて、国土交通省では、データ更新が必要な箇所を効率的に把握するため、市民投稿(市民から提供された情報)を活用した更新手法を検討しています。

今回の実証は、市民が日常生活の中で発見したバリアを簡易に投稿できる方法や、市民からの投稿をもとに自治体職員の使用を想定している「歩行空間ネットワークデータ整備システム」(試行的に構築された、タブレット端末などで簡易にデータの入力・登録を行うことができるツール。以下、整備システム)の操作性・機能性の改善点を探る目的で行われたものです。

昨年12月に行われた川崎市での実証と同様に、1日目に府中市内の「歩行空間ネットワークデータ」未整備のエリアにおいて、府中市職員が歩道などの段差、縦断勾配、幅員等を確認しながら整備システムでデータを新規作成し、登録するまでの一連の作業を体験。

2日目は、すでにデータが整備されているエリアにおいて、車いす利用者やシニア団体などの市民参加者が街歩きを行い、通行困難な段差・縦断勾配・幅員等のバリアを所定の調査票に記入し、現地写真と合わせて投稿。府中市職員が投稿された情報と写真をもとに現地を確認し、整備システムで必要に応じてデータを更新する、という流れで進みました。

【1日目】実地調査の前に、実証の概要や調査方法についてレクチャーを行いました。
【1日目】整備システムのレクチャーの様子。
【1日目】府中市職員による実地調査の様子。コンベックス(測定機器)で有効幅員を測っています。
【2日目】実地調査前のレクチャーの様子。府中市職員と市民ボランティアが3班に分かれて取り組みました。
【2日目】実地調査の様子。車いす利用者にとってのバリアを発見したら、該当箇所を撮影し、詳細を調査票に記録して報告します。
【2日目】実地調査の様子。自治体職員がバリア箇所を調査票や写真をもとに確認し、必要に応じてデータを更新します。

実証を行った後の意見交換会では、川崎市での実証と同様に、整備システムの使いやすさの向上を求める声のほか、次のような意見も聞かれました。

「自治体側としては、投稿者の主観によって何をバリアとして認識するかの個人差がでないよう客観的な投稿基準を設けたほうがいいように思う」

「街路樹の突起部分などデータの登録項目にないバリアもあるため、現状だとバリアの正確な内容を表現するのが難しいように感じた。また、何をどこまでバリアとして反映するか、データを入力する職員次第で内容が変わってしまう。こちらにも基準があるといいのではないか」

データ更新の負担を少なくするため、整備システムの操作を簡略化したいところですが、正確性や客観性を求めると詳細な情報を入力するための手間が増えてしまいます。

今回の川崎市と府中市での実証結果を踏まえて、国土交通省ではより効率的にデータの新規作成・更新を行うことができる整備システムの構築や、コストのかからないデータ整備手法の検討を進めていきたいとのことです。

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